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高森明勅
2020.8.27 06:00皇統問題

「旧宮家」案の実情

皇位の安定継承を巡り、旧宮家系国民男性に結婚という
人生の一大事を介さないで、そのまま皇籍の取得を可能にしてはどうか、
との提案が以前から一部でなされている。

しかし、「側室」が不在で「非嫡出」の継承を認めない条件下で、
明治以来の「男系男子」の“縛り”を維持していたら、“もし”そのような
手立てが可能だったとしても、将来への安定性は確保し難い。

過去の宮家(4世襲親王家)の実例を参考にすると、
正妻たる方の「54%強」は男子を生んでおられなかった。

なので、かなり多数の宮家を(世代を超えて)“継続的に”維持しない限り、
実際に資するものにはならない。
しかし、側室が不在では至難だ。
これまで「4乃至(ないし)5の宮家を常に確保し続けることによって、
側室なくとも男系継承は確率論的に可能」(竹田恒泰氏、『伝統と革新』創刊号、
平成22年)などとされて来た。

しかし、それは、過去の天皇の正妻たる方の「26.5%」だけが
男子を生んでおられなかったという、かなり“甘い”前提を設けての話だった。
しかし、私自身が検証した結果では、天皇の正妻たる方の場合も、
「35.4%」は男子を生んでおられなかった、と見なければならない。
過去の天皇や世襲親王家の実例に照らせば、最低限、必要とされる宮家の数は、
「4乃至5」ではとても足りない。
ところが、皇籍取得の対象となり得るのは、旧宮家のうち久邇(くに)・賀陽(かや)
・東久邇・竹田の4家のみ(多くの旧宮家は既に断絶した)。
しかも、当事者からは“後ろ向き”の声しか伝わって来ない。

「拒否反応がある」(久邇邦昭氏)、「立場が違いすぎ、恐れ多いことです」(賀陽正憲氏)、
「そんなお話になってもお断りさせていただくと思います」(東久邇征彦氏)、
「仮に打診があっても受けるつもりはございません」(竹田恒泰氏)など。
対象となる人々は皆さん国民なので、ご本人の意思に反して皇籍取得を「強制」
することは、勿論(もちろん)、出来ない。

万が一、僅かでも“強制の影”が感じられる動きがあれば、
国民多数の皇室への素直な敬愛の気持ちは、大きく損なわれる結果になるだろう。
従って、旧宮家系男性に皇籍取得を可能にする場合、当事者の意向確認は“絶対に”
不可欠な前提条件だ。

にも拘らず、政府は国会の場で、今後も当事者の意向確認は行わない、
という姿勢を明らかにしている(令和2年2月10日、衆院予算委員会での
菅義偉内閣官房長官の答弁)。

これが何を意味するか。

少なくとも、政府答弁が虚偽でない限り、
余りにも明らかではあるまいか。

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https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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